
第3号
〜コトバの深部〜
- 幻視 吉澤久良
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《亀裂》
桜闇鏡にうつらば異類とならむ
春琴の膝前に鑿しんしんと
戻り橋 鯨神伝説 水の女
常世坂 産土の滝 童女羽化
蒼穹に半眼 配達夫未着
茶会果て僧侶は肉を吊りにゆく
老嬢に蛍群がり卵産む
ぬばたまの鈍器唾するをやめず
Y軸ぬめらし魚族がのぼってくる
左官来て蝶に自虐の白を塗る
《窯変》
なのはなばたけ一角獣つがう
少年の眠りに蛇は根をおろす
止まり木に鶸の屈託暮れ残る
世紀末天井裏の挿し絵画家
春迷路禿の綾取りきりもなく
樹上の騎手それぞれの余罪
縄燃やす縄燃え残る瓜子姫
遺失物係が覗くガラス頭
翁面して押し問答の図である
まなうらの宦官のまなうらのコトバ
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