Live-Leaf

本誌紹介

第3号
〜コトバの深部〜

巻頭言  吉澤久良

 一年前に私たちは、《読みの追求》という基本方針を掲げ、「Leaf」を創刊した。中心に据えたのは互評である。互評の出発点は、読んでもらえる相手に向かって書きたい、そして反応がほしい、という私たちの個人的願望だった。しかし号を重ねるにつれ、本誌の互評の意義は変わりつつあると考えている。
 川柳誌の鑑賞の多くは褒め言葉ばかりであり、批判はあまり活字にならない。原因は評者と作者の両方にある。評者が明確な批評の軸を立てられるか、批判によって反感を買ってもやむをえないという覚悟と準備があるか、作者の側に評者の批判を容れるだけの柔軟性と許容量があるか…。多くの川柳人は批判に慣れていないのだ。
 川柳批評の確立のためには、まず前提として的確な作品読解が必要になる。的確な読解とは、どう感じたかという恣意的主情的感想ではない。句の構造を踏まえた、内容の客観的把握である。川柳では評が感想に流れ、批評のベースとなるべき〈テキストとしての作品の読解〉がなおざりにされてきた。句の内容をどう把握するかという練習問題が、川柳界では不足していたからだ。そのため、作品読解の力を充分には養成できなかったのだ。
 本誌の互評は、まだまだ不十分なレベルだが、作品読解を志向している。また、句がダメなら当然批判するという前提で本誌は出発しており、仲間意識による手加減はない。互評自体もシビアに比較されるはずだからだ。だから、読者は本誌の互評を練習問題に応用できるはずである。本誌はそのような意識で互評を続ける。これは川柳界への本誌の主張である。
 新しい企画を二つ始めた。今号から少し舵を切って、同人作品以外も読んでいこうと考えている。
 一つは、先輩の作品を読むことである。今号では石田柊馬氏を取り上げた。読者にも入手しやすい『セレクション柳人 石田柊馬集』(邑書林)をテキストにし、同人四人が「石田柊馬の十句」を選び、鑑賞を書いた。わずかなページであるが、川柳批評へ向けてとりあえず一歩を始めること、それがこの企画の意図である。
 もう一つは、テーマ詠と互評に外部の方に参加していただいたことである。今号では湊圭史氏にお願いした。外部の視線を導入することによって、私たち四人が自分の書き方の延長上でしか読めない現状を何とか撹拌したい。
 創刊以来、多くの激励と応援をいただいた。また、貴重なお叱りもいただいた。それは裏返せば、川柳の今が停滞しているという感覚があるということかもしれない。後発誌には攻めの奔放さが期待される。《読みの追及》のために、今後さらに新しい刺激が必要だろう。止まれば倒れる独楽みたいなものだと思うと、少々苦笑してしまうのである。

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