Live-Leaf

本誌紹介

第2号
〜融解し浮遊するコトバ〜

【感触】  吉澤久良

《急》
凶眼の月 燎原に棒一本
渇き谷 逆子のアダム 悲の器
ゴムの蛇 イヴの幻聴 花篝
蝶濡れて首都に繁殖する神話
土偶の眼窩にみっしりと蟻
朧夜の荒地野菊を分け老婆
鏡坂ほろほろ落ちてくる園児
板の間を横切る手足のついた花
ネジ式の首据えかえて口の闇
水無月の魚眼ひとつとなりはてる
《緩》
空は合板 世界は火事なのだろう
遠干潟孵化せざるもの降りつのる
曙光は雪崩れ私の手の長さ
朝蝉や苦き音叉を受胎せり
パン皿の静謐妊婦は透き通る
夏の潮記憶の林檎漂流す
バベルの塔眼路の限りに一年草
オニヤンマ燃えるいずれか夢幻なる
鳥渡るあるかなきかの糸を引き
頭上の骨格標本 薄墨の松葉杖

Copyright 2010- Leaf All Rights Reserved.